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柳瀬正夢展5月18日まで/柳瀬正夢研究会代表 甲斐 繁人/道化の「仮面」に込めた抵抗の姿勢

2014年05月12日(月)
 
※以下は、「愛媛民報」(2014年5月11日号)よりの転載です。

■「仮面」 油彩画1936年 愛媛県美術館所蔵

 柳瀬正夢の回顧展「柳瀬正夢1900-1945―時代を生きたひたむきな熱情―」は現在、松山市の愛媛県美術館で開催中です。会期は、5月18日まで。柳瀬正夢研究会代表の甲斐繁人氏の特別寄稿を紹介します。

 劇場の暗転幕を思わせる背景の濃緑と補色をなす褐色の木製丸テーブル上に置かれた道化の「仮面」が描かれている。

 「アサヒグラフ」1932年1月6日号(今展で展示中)に、柳瀬正夢、麻生豊、堤寒三、清水封岳坊、服部亮、宍戸左行ら漫画家の「城」である家庭を覗のぞくグラビア特集がある。柳瀬の「城」は、馬に跨る2人の娘の重みを悦ぶ父子の戯れをほほ笑み、小夜子夫人が落馬しそうな末娘を支える。その「城」は幸せに満ちている。

 この年の11月5日早朝に特高によって柳瀬の「城」は破壊され、収監中に妻を病死で失い、生活は失意の底に暗転する。

 やがて、柳瀬一家は、小林勇たちのはからいで淀橋区(現新宿)西落合の故松下春雄のアトリヱを借り暮らす。アトリヱを勤労者に開放して絵を教える「コペル」という絵画グループを指導していた頃にこの作品は描かれた。

 柳瀬が治安維持法違反で検挙された年の春、東京地下鉄従業員は、出征兵士の身分保障を含む待遇改善要求を掲げて3月19日から24日にかけ車庫内の電車に立てこもりストライキで抵抗して闘った。

 宮本百合子の小説「刻々」にも描写され、非合法共産党の指導下にあった日本労働組合全国協議会が指導した「モグラ争議」として知られた東京地下鉄争議である。

 この争議を闘った一人の女性がこのグループに加わる。やがて、その女性は忙しく留守が多い柳瀬家の世話を任されるようになる。

 松岡朝子の回想を引く、「私が風邪をひいて柳瀬のアトリエに行くのを休んだとき、柳瀬が私の家に訪ねてきて長い間、父と話をしていました。そのあとで『仮面』という絵を持ってきて壁に掛けてくれました。小林勇さんも父を説得してくれたそうです」。道化の「仮面」が置かれたテーブルは小林勇が贈ったという。

 道化師は、支配者が人々の日常に押しつけて抑圧する価値観を、抑圧される側から、揶揄的な言動と行為によって抑圧者の価値観を嗤(わら)い攻撃する存在でもある。また、仮面とは、顔を隠し正体を分からなくするために用いられるが、人の本心を包み隠す意味を含み持つ。

 アジア侵略に突き進む軍国主義の弾圧の嵐は激しくなり、この2年前には日本プロレタリア美術家同盟が解体するなど柳瀬がよって立つ社会主義的運動が壊滅に追い込まれるが、言論弾圧に主義を曲げずに抵抗する闘いの決意が道化の「仮面」に込められている。

 戦時下も「読売新聞」に機知にとむ社会諷刺の筆を揮ふるい、「中央公論」、「新風土」などの出版物、「子供之友」などの童画、里雪、極堂らとの俳諧世界へ表現を広げ、個展を持続した創作活動にしたたかで柔軟な抵抗の証を観るのである。

※柳瀬正夢展は「しんぶん赤旗」日曜版1月19日号でも紹介されました。
↓画像をクリックすると拡大表示します。
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